思考の仕組み

〔自己を理解する法と術〕
〔思考の仕組み〕
思考基盤である記憶は生命遺伝情報の誤差である

自己中心を隠す闇が誤差を塞いでいる。
この誤差は、過ちの中心として君臨する。
この誤差としての中心は闇であり、
断片化した恐怖であり、
破壊の因であり、
生きている全体の部分である。
この事実が暴かれずに動くことが破壊をもたらす暴力であり、この世の事実である。
自己中心を塞ぐ闇が、これらを見えなくしている。
この闇が、恐怖である。

この見えない拠点、基点(測定のための基準点・考えの中心となる点)が誤差であり闇であるという二重性を持って生命を迷わせるのである。
生命はこの基点から、誤作動する。
これは生命原理である。
生命は恐怖を抱えるという原理である。

この基点=誤差は知識と記憶の二重性を持つ。
人間の知識は、他の生命の記憶と対立している。
この知識と記憶の分割が、計量の闇と迷いを造る。

人間を含めたすべての生命の遺伝子、
生命の記憶がある。
そこに、言葉とイメージで囲いを造り、その中心から知識で理論武装した生命が知的に発展を遂げたものがわれわれ人間である。(よって、知的理解というものはないのであり、理解というものは知的活動であると考えるわれわれは、破壊を強めるばかりである。知的活動とは、暴力の別名である。)
こうして知識を囲い蓄積していく人間の記憶が生まれたのである。
この人間記憶は、生きている自然と対立し、破壊し、人間記憶自体もまた、分割することで、二重の破壊と苦しみを、われわれは生きているのである。
この真実を見えなくしている闇を持続・継続しているのが時間である。
時間は(知識・記憶)=(過去)からの動きである。
時間は、思考である。
この思考の動きである時間は、機械性質を持つ動きであり、生きた動きである可能性を奪う。

人間時間は、生命時間を奪っているのである。

時間によって私たち人間は時間を無くしているのです。

時間=思考の根拠は暴力です。
計れない命を計る中心、
この中心から計られた動きが命を破壊する暴力です。

これらをどのようにして乗り越えるのか?
それは、時間の危険を知らせるシグナル、
すなわち葛藤の理解によるのです。
葛藤は、自分自身である暴力の構造を自らが暴いてくれます。
そのための絶えざる気づき、
自己を学び、自己に聞き、自己を見る術です。

クリシュナムルティ生の書物

みなさん、私たちの精神は今、退廃しつつあります。
機械的になりつつあり、流れの中で迷っています。
それで、若者もまた迷いつつあるのです。
あなたは、仕事を持つかも知れません。
家を持つかも知れません。
すべての種類のものごとを持つかも知れません。
しかし、内的にあなたは迷っています。
あなたは不安定で不明瞭です。
あなたは何を信ずべきかを知りません。
その理由のために、
思考の充分な意義を理解しなければなりません。
私たちは思考をもとに生きてきました。
私たちのすることすべては、思考に基づいています。
そして、思考は不完全であるので、
私たちの生は不完全です。
私たちは完全性の感覚を与えてくれる何かで、
生を充たそうとします。
それで、私たちの生は常なる闘争です。
そして、私たちは言っています。
「この葛藤、この戦いを終わらせなさい」と。
私たち自身にと、外的に、です。
あなたがあなた自身を理解するときにだけ、
それは終わりうるのです。
(17~18p)

《1月21日》